この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第百一話「期待」

time 2016/03/10

第百一話「期待」
 いきなり再婚という流れになって、そのままの勢いに乗って、すぐにハワイのマウイ島に式場を予約して、二人だけの結婚式を挙げた。どうしても海外が良いというサエコの希望を叶えるには、とにかく時間が無かった。お腹の中の子供に負担がかからないギリギリの日程で、とにかく急いで全ての手配をした。
 
「田附さん、ハルカさんに続いて、またナンバーワンやん。」
「偶然ですけど、そうなんですよ。」
「リッツカールトンって、めっちゃ高いんやろ?」
「そうですね。」

 ハネムーンを兼ねた海外挙式のことを山下さんに伝えると、相手がサエコであることには驚いた様子を見せたけど、一週間も店を離れることには何ら文句も言わず、しっかりと良い式を挙げて、今回の結婚生活こそ上手くいくようにと、逆に励まされた。オーナーと店長の会話らしくないけど、こういう関係の方が良いのかもしれない。

「ハワイで、ベビー用品を買いたいわ。」
「日本で買ったら、ええやん。」
「安いんやって。ベビー服とかが。」
「まぁ、好きにしたらええよ。ご自由に。」
「あ、成田離婚もありますね、これは。」
 
 サエコは、シズエとは真逆の性格で、なんでも明るく対応してくれるから安心できる。再婚を考えるときには、やっぱりシズエとの暗黒の結婚生活を思い出さざるを得ないんだけど、それでも、この子と結婚したいって思えるのがサエコだ。もう失敗は出来ない。あと、はじめて人の親になるけど、サエコとなら不安はない。
 
「そろそろ、買い物に行こうか。」
「はぁ、まだ何か買うの?」
「今からが本番やん。ハワイまで来たんやもん。」
「そうなんや。」
「はい、シャネルに向けて、レッツゴー!」
 
 日本に帰ったら、すぐにお腹が大きくなってきて、その後は、出産から育児と、自由な時間が少なくなるから、今のうちに、とにかく楽しんでおきたいというサエコの気持ちも分かる。でも、なんで山のようにシャネルばっかり買う必要があるねん。バッグだけで五つも買ってるやん。マウイ島にも、シャネルの店があるなんて、計算外やったわ。
 
「こんなやつ、持ってるやん。」
「そうかな。」
「こっちの色の方が、似あうんちゃう。」
「そうかな。」
 
 もう買い物に夢中で、俺の相手をしてくれへんやん。まぁ、すでに俺の奥さんになったサエコに贅沢させてあげるのも、俺の幸せやらか、ええねんけど。いや、それにしても合わせて三百万円って、買い過ぎと違うかな。日本に帰ったら、また仕事を頑張らないと。
 
 店をオープンしてから初めて、こんなにも長期間の休みを取ったから、かなり不安ではあったけど、戻ってみたら山下店長を中心として、普段通りの営業をしていて、ちょっと拍子抜けした。もうちょっと何か「田附オーナーがいなかったから大変でしたよ。」みたいなことを言ってくれても良いのに。
 
「あの、これ、ハワイ土産やで。」
「マカダミアナッツか。やっぱり。」
「ケイちゃん、そんな言い方、酷いわ。」
「みんなの予想通りやったから。」
「俺、期待を裏切らない男やからね。」
 
 女の子のなかには、俺が成田離婚すると予想していた子もいたみたいだけど、それは残念ながら、期待を裏切ったみたいだ。ちゃんと仲良く日本に帰ってきて、これからも一生、お互いを大切にすると誓い合ったから、大丈夫。離婚なんか、人生で何回もするもんとちゃうで。
 
「お前、今回は大丈夫なんか。」
「はい、大丈夫ですよ。」
「悪い報告、期待してるで。」
「やめてくださいよ、佐伯専務まで。」
 
 お土産のマカダミアナッツは、やはり不評だけど、仕事もプライベートも順調な俺を、佐伯専務は喜んでくれている。シズエのことでは、めっちゃ迷惑をかけたから、本来なら合わす顔がないんだけど、またこうやって一緒に飲める関係になって、嬉しい。
 
 店の女の子も、佐伯専務も、みんな揃って、離婚に期待してるけど、今回は幸せな家庭を築くねん。
 
「かわいいなぁ、大好きやで。」
「ありがとう、ヒロキくん。」
「ほんま、マリリンちゃんは可愛いなぁ。」

 
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※この物語は、主人公の回想に基づき、だいたい8割くらい真実のフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません!とは言い切れません。

※夜の連続ブログ小説ということで、毎週月曜日から金曜日の夜8時(日本時間)に、最新話をアップいたします。毎晩読んでいただくのもよし、ある程度まとめて読んでいただくもよし、ご自由にお楽しみください。
 

 

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