この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第五十四話「特集」

time 2016/01/07

第五十四話「特集」
 結婚準備を進めながらも、当然、仕事を休むわけにはいかない。女の子の管理も、店のイベントや宣伝も、備品の購入も、俺のマネージャーとしての仕事になっている。佐伯店長が、本気で俺のことを店長に育て上げようと考えてくれていて、色んなことにチャレンジする機会を貰えている。
 
 俺ひとりで面接して採用した女の子が、うちの店に在籍している子たちの半分以上になった。出勤初日の講習からずっと俺が面倒を見ている女の子たちは、ほとんどが風俗未経験の状態でうちの店に来た子たちだけど、みんな自分なりの個性を活かして、少しずつ良いお客さんを掴めるようになってきている。
 

「平田くん、新しいバイトの子、見つかりそう?」
「あ、はい。うちのサークルのやつが一人、やりたいって。」
「来週、何曜日でも良いから面接に来れるかな?」
「はい、予定を聞いておきます。」 

 アルバイトとして入店した時には俺の先輩だった平田くんは来年、大学を卒業して、大手の電機メーカーに入社することが決まっている。うちの店で、俺より古株の方が少なくなってきた。まだ1年ちょっとしか働いていないのに、風俗業の人の入れ替わりは激しい。
 
「田附、どうや?」
「はい、昼から十二名の来店です。」
「違うやん。式の準備は、どうや?」
「あ、そっちですか。まぁまぁ順調です。」
「そうか。なんかあったら言うてや。」
 
 佐伯店長は、俺たちの結婚式のことを気にかけてくれている。実際のところは、俺よりも、シズエのことが気になるんだろう。手塩にかけて育て上げたナンバーワンの晴れの舞台を、心待ちにしているようだ。こんなに可愛がっている女の子を奪い取った俺を、何も言わずに許してくれていることには、本当に感謝しかない。
 
 シズエが辞めたことで、二週間くらいは店の売り上げが明らかに下がったけど、これまでシズエを指名していたお客さんを他の女の子たちに振り分ける作戦が上手くいっている。もちろん他店に持って行かれたお客さんもいるだろうけど、うちの店の人気に陰りは見えない。なんとか佐伯店長を失望させずに済みそうだ。
 
 結婚することを決めてからの半年間、店長から言われた「ハルカが引退して店の売り上げが下がったら、お前のせいやからな。」という言葉が、頭の中でガンガンと響いていた。だから、なんとか売り上げを盛り返せて良かった。あとは、佐伯店長も期待してくれている結婚式を成功させるだけだ。えーっと、あと、やるべきことは・・・あ、電話だ。
 
「もしもし、田附です。」
「もしもし、私、ウェディングタウン編集部の岩井と申します。」
「え、あ、はい。」
「私ども、結婚情報誌を毎月発行しておりまして。」
「もう、式場とか決めましたけど。」
「はい、存じ上げております。」
「は、はぁ。」
「この度、北山チャーチ様からご紹介をいただきまして・・・」
 
 この岩井さんによると、雑誌で京都の結婚式場の特集を組むに当たって、モデルになってもらえる新郎新婦を探していたところ、めちゃくちゃ綺麗な新婦がいるとシズエの噂を聞きつけ、俺に連絡してきたらしい。
 
「それ、俺たちの顔が雑誌に出るってことですよね。」
「もちろん、見開き六ページの特集で大きく掲載させていただきます。」
「そうですか。」
「お祝い金といたしまして、僅かではございますが謝礼もお支払いいたします。」
「そうですか。」
 
 正直、嬉しい。結婚情報を専門に扱うような雑誌の編集者が、情報を集めて回った結果、俺の奥さんになるシズエが最も綺麗で特集にふさわしいと賞賛してくれているんだから。でも、全国で販売される雑誌に載れば、ピチピチホームのハルカだと気付く読者もいるかもしれない。
 
「すみませんけど、お断りします。」
「え?お二人の一生の記念としていただけるような誌面になるかと思います。」
「俺、照れ屋なんで、雑誌とか来たら緊張しちゃうんで。」
「目立たないようにしますので。」
「いや、ほんま、ごめんなさい。」
 
 雑誌になんか載らなくても、俺たちの結婚式は、ふたりの記憶の中に一生残るし、参列者も写真を撮ってくれるだろうから、それだけで十分だ。そんなことより、雑誌社にまで噂が届くほどのベッピンが、俺の奥さんになるんやで。ワクワクするわ。

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※この物語は、主人公の回想に基づき、だいたい8割くらい真実のフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません!とは言い切れません。

※夜の連続ブログ小説ということで、毎週月曜日から金曜日の夜8時(日本時間)に、最新話をアップいたします。毎晩読んでいただくのもよし、ある程度まとめて読んでいただくもよし、ご自由にお楽しみください。
 

 


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