この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第四十七話「媒体」

time 2015/12/22

第四十七話「媒体」
 マネージャーとしての俺の仕事は、女の子の管理だけではない。店を宣伝する広告を考えるのも、俺の仕事だ。店長が最終チェックをするから完全に俺の仕事とは言い切れないんだけど、それでも大体の場合は、一発でオッケーが出ているから、センスはあるみたいだ。
 
 京都の風俗店ばかりが並べて掲載される地域別の風俗雑誌では、ピチピチの素人娘が多数在籍していることを前面に押し出した広告を作る。また、もう少し広域の大阪などでも見られるような媒体では、舞妓さん言葉を織り交ぜて、京都の木屋町で大人気のファッションヘルスであることを力強く伝える広告が効果的だ。

「あのー、田附マネージャー、すみません。」

「お、ミっちゃん、どうした?」
「彼氏の件で、ちょっと相談が・・・。」
「あ、ちょっと待っててな!」
 
 西城のオッサンは、オフィスで踏ん反り返って競馬新聞を眺めてるか、俺を殴っているか、女の子の部屋に忍び込んで悪戯をしているか、とにかくヒマそうにしていたけど、マネージャーという仕事は忙しい。やろうと思えば、いくらでも仕事が溢れだしてくる。身体が二つ欲しいくらいだ。
 
 風俗の広告は、他の業種に比べて、掲載料が高い。掲載できる媒体が限られているし、儲かっている風俗店は宣伝に金を惜しまないから、結果的に掲載料が高くなっている。業界全体で媒体を食わせてやっているようで馬鹿らしく感じることもあるけど、まぁ仕方ない。
 
「この“ピチピチ”の文字、もうちょっと可愛らしくして。」
「はい、分かりました。」
「この地図、ちょっと分かりにくい気がするけど。」
「そうですかねぇ。」
「はじめて木屋町に来る人、分からんと思うで。」
「デザイナーに言ってみます。」
 
 自分でデザインをいじれたら、もっと簡単なんだろうけど、こういうのは苦手だから、媒体の営業マンに説明して、修正してもらうしかない。店長からも、広告に関しては「指示は明確に、細部までこだわれよ。」と言われているから、営業マンには少し嫌な顔をされるけど、イメージ通りの広告が出来るまで、粘り強く修正を重ねるしかない。
 
 いくら良い女の子を揃えても、お客さんが来なければ売り上げにならない。逆に、お客さんが来なければ、良い女の子は別の店に移ってしまう。だから、女の子の管理と、広告による集客は、ピチピチホーム号の両輪だ。どっちかが欠けても、店は立ち往生してしまう。
 
「ミっちゃん、ごめん!待たせたな!」
 
 やばい。やってしまった。ミっちゃんの部屋に行こうと思ってオフィスを出たら、ちょうど媒体の営業マンが入ってきたから、そのままオフィスに戻って話をしていたら二時間が経っていた。俺、目の前のことに夢中になってしまうから、完全にミっちゃんのことを忘れていた。営業マンを見送って、来週のシフトを作ろうとデスクに向かったら、“ミサコ”の名前が目に入って、さっきミっちゃんに呼ばれていたのを思い出して、慌てて部屋に行ったけど、もぬけの殻だった。
 
 次の日も、その次の日も、ミっちゃんは早番のシフトに入っていたけど、店には出勤してこなかった。もちろん、携帯電話に掛けてみたけど、呼び出しさえせずに留守番電話サービスに繋がる。俺がすぐにミっちゃんのところに行って、「来客があるから、もうちょっと待ってな。」と、ひと言かけておけば、きっと彼女は素直に待っていてくれていたに違いない。
 
「いきなり消えんねんもんなぁ。」
「うん?何かあったの?」
「いや、ミカちゃんていう女の子がな・・・」
 
 他の女の子のことは、あまり話さないようにしているけど、ミっちゃんのことは個人的にショックだったので、ハルカに意見を聞いてみたら、「あの狭い個室におると、不安が膨らんでくるんよ。」と言う。たしかに、そうだろう。もっともっと女の子たちのケアを真剣にやらないとマズい。俺、がんばるで!
 

この1冊ですべてわかる 広告の基本
波田 浩之
日本実業出版社
売り上げランキング: 15,449

※この物語は、主人公の回想に基づき、だいたい8割くらい真実のフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません!とは言い切れません。

※夜の連続ブログ小説ということで、毎週月曜日から金曜日の夜8時(日本時間)に、最新話をアップいたします。毎晩読んでいただくのもよし、ある程度まとめて読んでいただくもよし、ご自由にお楽しみください。
 


sponsored link