この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第四十一話「罪状」

time 2015/12/14

第四十一話「罪状」
 西城のオッサンに金を貸した女の子が続々と見つかった。五万円くらいの少額のものから、百万円近くまで、合計で三百万円ほど。当たらない馬券ばかり買っているから、返済の目途も立たず、借金を重ねていたようだ。「このことを誰かに喋ったらシバくぞ。」と脅しながら金を借りているんだから、タチが悪い。
 
 女の子から金を借りていたことに佐伯店長は怒り心頭の様子だったけど、さらに店長を怒らせる事実が判明した。いつも西城のオッサンは営業中にオフィスから居なくなって、どこに行ってるのか分からないことが多いんだけど、どうやら俺や店長の目を盗んで女の子の部屋に忍び入り、身体を触ったり、時には講習という名の勝手な性処理をしていたらしい。
 
「明日、西城が出てくるけど、気づかれんなよ。」
「はい、分かりました。」
「もうちょっと泳がせるわ。」
「はい。」

 一緒に飲みに出掛けたときには、「西城はな、元ヤクザやから、筋は通しよる。それが好きや。」と言っていた店長にとっては、完全に裏切られたという気持ちなのだろう。俺に対しては、「マネージャーの席が空くチャンスやで!」と笑いながら、お道化た雰囲気を見せているけど、本気で西城のオッサンをクビにするつもりのようだ。

 この件の成り行き如何では、俺がマネージャーに昇格できるかもしれないと知ったハルカも、佐伯店長にオッサンの悪行の数々をチクってくれている。ピチピチホームの大看板であるハルカの言葉は、俺が言うよりも数十倍、いや数百倍、店長の心に刺さったようだ。いや、その分、俺がハルカと付き合っているなんて知ったら、一体どんな酷い目に遭わされるのかと、恐怖を感じているんだけど。

「西城は、借りた金を何に使ってるんやろ。」
「ウマですよ。」
「はぁ?競馬か。」
「はい。よく馬券を買いに行かされるんで。」
「ホンマか。アイツ。」

 俺は、西城のオッサンと出会って最初の命令が「馬券を買うて来てくれ。」だったので当然のことだと思っていたけど、店長は俺が馬券を買うパシリに遣われていることさえ知らなかったらしい。風俗業界だから、なんとなく馬券を買いに行くくらいはアリだと思っていたけど、どうやらアウトだったようだ。

 こうして、特別休暇の三日間のうちに、オッサンの罪状が確定した。

ー、女性スタッフからのお金の借り入れ 総額三百五万五千円。
ー、女性スタッフへの性的な悪戯、および軽度の強姦
ー、男性スタッフを私用(馬券購入)に使ったこと

 俺がアルバイトとしてピチピチホームに入ってから三か月間、ずっと頭を殴られ続けたオッサンがついに居なくなる。ホンバン野郎を川に放り込んだときの雄姿だけしか良い印象のないオッサンなので、心の底から嬉しい。

「田附、行くぞ。」
「はい、店長。」

 あのゲイバーに行った日から、ほぼ毎晩のように俺は店長に飲みに誘われている。「給料が安いから晩飯くらいは食わしたるわ。」と言ってくれるんだけど、実のところ、今の給料でさえ芸能プロダクションで働いていた頃よりも多い。でも、酒を飲みながら、店長の物の見方や、考え方を知ることが、俺にとってはとても有意義で、楽しい。

 ただ、二日に一回は来ているこのゲイバーで、ひとつ困ったことがある。オカマのママが、俺のことを気に入っていて、ホテルに行こうと何度も誘ってくる。初めは冗談かと思って、何となく断っていたんだけど、どうも本気で誘われている。時間が遅くなってくると、いつの間にかテーブルの下から顔を出して、俺のズボンのチャックを下ろす。そう、初めてここに来た時と同じように。

 今晩の店長は、いつもより口数が少ない。やはり西城のオッサンに裏切られたことで、気持ちが沈んでいるんだろう。ユウジさんが何とか盛り上げようと頑張っているけど、無理そうだ。結局、「お前は、まだ飲んどけ。」と言って、五万円をテーブルの上に置いて、先に店を出て行った。

「ヒ・ロ・キ・くん!」
「え、ママ、なに?」
「行こ。ホテル行こ。」

 店長の寂しそうな背中を見送った俺は、ママを無下に扱って悲しそうな気持ちにさせるのも申し訳ない気分になって、「一回だけやで。」と断ってから、オカマのママと一緒に店を出た。黒髪が背中まで伸びていて、口紅や頬紅は塗ってるけど、ただのオッサンやん。街灯に照らされたママの顔を見て、正直、逃げようかとも思ったけど、ウキウキと弾むように歩くママの様子を見て、かわいいなとも思った。

 この夜、俺は、オカマのママに抱かれた。

 

罪と罰〈上〉 (新潮文庫)
ドストエフスキー
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※この物語は、主人公の回想に基づき、だいたい8割くらい真実のフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません!とは言い切れません。

※夜の連続ブログ小説ということで、毎週月曜日から金曜日の夜8時(日本時間)に、最新話をアップいたします。毎晩読んでいただくのもよし、ある程度まとめて読んでいただくもよし、ご自由にお楽しみください。
 


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