この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第三十話「木屋町」

time 2015/11/27

第三十話「木屋町」
 街の北と東西の三方を山々に囲まれた京都盆地の冬は寒い。まさに凍てつくような寒さだ。まだ日が出ているのに、太陽の温かさが感じられない。百メートルくらいの四条大橋が、いつもより随分と長く感じられる。

 綺麗な碁盤の目に描かれた京都の街を東西に貫く四条通の鴨川に架かる四条大橋は、華やかな夜の街、祇園へと人々をいざなう橋である。橋を渡れば、四条通の南北に、昔ながらのお茶屋や料亭、高級なクラブやバーが密集し、情緒ある町並みとともに、今も昔も人々の心を惹きつける。俺にとっては、オヤジとの想い出が詰まった場所だ。

 祇園を背に四条大橋を渡りながら、「まるたけえびすにおしおいけ あねさんろっかくたこにしき しあやぶったかまつまんごじょう・・・」と、京都市内の通りの名前を繋げ合わせた童歌を口ずさむ。

 丸太町通、竹谷町通、夷川通、二条通、押小路通、御池通と、東西に線を引き、寺町通、御幸町通、麩屋町通、富小路通、柳馬場通、堺町通と、南北に線を引けば、京都市内の地図が完成する。東西に走る通りには、二条通のほか、三条、四条、五条、六条、七条と、数字の入った通りがあるので、まずはそれを横軸として覚え、少しずつ縦軸を加えながら、京都の街を頭の中に描いていくと良い。

 また、縦横が交わる交差点の名前は、丸太町通と堀川通の交差点は「堀川丸太町」、御池通と烏丸通の交差点は「烏丸御池」、四条通と河原町通の交差点は「四条河原町」となっているから分かりやすい。ただし、東西と南北のどちらの通りの名前が前で、どちらの通りが後に来るのかは、交わる二つの通りの強弱で決まるので、慣れるまでは少し戸惑うかもしれない。

 通りや交差点の名前に加えて、覚えておくべきは、西端を南北に流れる桂川と、東端を流れる鴨川だろう。俺の自宅があるのは桂川沿いの桂という地域で、多くの家々が立ち並ぶ住宅街。そして今、寒さに堪えながら背中を丸めて歩いている俺の足元を流れているのが鴨川だ。

 伏見稲荷大社に参り、京阪本線を四条駅で降りた俺は、木屋町へと向かっている。高級な大人の遊び場である祇園と比較すれば、若者向けの今どきな遊びスポットが木屋町だ。祇園の対岸にありながら、全く違う魅力が、木屋町にはある。お洒落なバーや居酒屋に混ざって、ピンサロやファッションヘルスが、木屋町にはある。

 ここ最近、俺は夢中で木屋町のファッションヘルスに通っている。すでに木屋町にある全てのファッションヘルスに行った。まぁ、全てと言っても、僅かに二十六店舗しかないんだけど。

 京都は、歴史と伝統がウリの観光都市なので、景観を損なうようなものは徹底的に排除される。だから、京都の役所は、性風俗営業への対応もかなり厳しくて、営業の認可を出すことに消極的だ。俺が高校を卒業する頃から、東京にはファッションヘルスがあったけど、京都ではなかなか出店の許可が下りず、ファッションヘルスの歴史は浅い。

 とは言え、ひとつも無いなら話は別だけど、二十店舗以上の店があるんだから、ここから自分が行くべき店を選ぶことに全力を注ぐべきだと、俺は考える。単なる遊びではなく、真剣にファッションヘルスと向き合った結果、俺は今日、「ピチピチホーム」に行くことに決めた。既に、電話で予約もしてある。

 僅かな店舗数でも、意外とそれぞれに特徴があって、どんよりとした暗い雰囲気の店もあれば、明るく楽しそうな店もある。なぜか背中に刺青の入った女の子ばかりの店もあるし、妙にぽっちゃりした女の子の多い店もある。

 そんな中で俺が選んだ「ピチピチホーム」は、素人っぽい若い女の子をウリにしているファッションヘルスだ。さて、そろそろ予約を入れた時間だ。思いっきり夢中になれる時間を求めて、手袋とコートを脱いで、店内へと足を踏み入れる。

「四時で予約した田附です!」
「いらっしゃいませ。」
「アルバイトの面接に来ました!」 

 

 

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※この物語は、主人公の回想に基づき、だいたい8割くらい真実のフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません!とは言い切れません。

※夜の連続ブログ小説ということで、毎週月曜日から金曜日の夜8時(日本時間)に、最新話をアップいたします。毎晩読んでいただくのもよし、ある程度まとめて読んでいただくもよし、ご自由にお楽しみください。
 


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