この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第十五話「ツイてる男」

time 2015/11/06

第十五話「ツイてる男」
 完全に飲み過ぎた。昼過ぎに渋谷の駅前で待ち合わせて、男だらけで飲み始めた。「昼から飲むビールは最高やな。」なんて言いながら、ビールをガブガブと飲み続けた。スタートが早いから、ほどほどで切り上げようと思っていたけど、夕方を過ぎた頃から、高校時代の懐かしい顔ぶれが次から次に登場したので、後ろ髪を引かれて退散できず、そのまま飲み続けた。でも、夜八時を過ぎて、いよいよ座っているのも辛くなってきたので、帰宅した。

 アパートに着いて、素直にベッドに入れば良いのに、いつもの癖で伝言ダイヤルを確認すると、ジュンコちゃんという女の子から「会えたら嬉しいな。」とのメッセージが入っている。ずっと気になっていた女の子が、いよいよ釣れた。簡単に女が釣れるのも楽しいけど、時間をかけてじっくり釣り上げるのも、また一興。ただ、ジュンコちゃんの指定してきた待ち合わせ時間は今夜二十二時、しかも場所は渋谷。

 それでも、俺に迷いは無かった。急いでシャワーを浴びて、服を着替えて、渋谷へと逆戻りした。確実に酒は残っているけど、時間も無いし、プレリュードで出掛けた。

 道玄坂の脇道、いつも通りのお決まりの場所に路上駐車して、ジュンコちゃんが指定したカフェバーに向かった。ジュンコちゃんは、五人のグループで先に飲んでいて、俺はそこに合流する形になった。話を聞いてみると、この五人は全員が初対面で、それぞれ伝言ダイヤルで知り合った即席カップル三組が集まったのだそうだ。ジュンコちゃんと二人で楽しく飲むつもりでいたので、やや拍子抜けした。

 

 とは言え、まずは、この場のノリに追い付こうと、ビールを三杯くらい一気に飲み干した。この辺りから、かなり記憶が怪しい。でも、たしかトオルとかいう名前のモデル風のスラっとした男が、いま大人気の男性七人組アイドルグループの話題を始めて、「オレ、ウチウミくんとマブダチだからさぁ。」と、本当でも嘘でも、いずれにしても面白くない話を延々とするので「俺は明日、アースシェイカーのライブに行くねん。マブダチちゃうけどな。」と、少し嫌みっぽく言ったつもりが、またトオルがしゃしゃり出て「アースシェイカーと言えばさぁ。」と、俺の話を奪って自分の話を始めたので、えーっと、話し始めたので、うーん、この後の記憶は完全にない。

 

 どのようにして自分の部屋まで帰ってきたのかさえ記憶が曖昧だ。まだアルコールが抜けていない。頭がガンガンと痛い。まずはシャワーを浴びよう。なぜか素っ裸なので、ちょうど良い。熱湯を浴びれば、何か思い出すかも。ベッドの脇の椅子にかかっているバスタオルを持って、風呂場へと向かう。

 

京都から帰ってきて以来、酒を飲んでいるとオヤジのことが頭に浮かんで、何か自分も始めなければならないと、心の中で自分を追い込んでしまう。考え事をしながら酒を飲むと良くない。気づかないうちに酒が進み、悪酔いしてしまう。ここ数日、二日酔いが続いているのも、きっと、このせいだ。

 

 とにかく身体がダルい。頭が痛い。シャワーの蛇口を全開までひねって熱湯を浴びる。熱湯が身体にしみる。深い溜息をついて、少しずつ自分を取り戻していく。ジュンコちゃんを含め三人の女の子の顔はハッキリと思い出せるんだけど、男二人の顔が出てこない。俺らしいなと自分に呆れてしまうが、今、もうひとつ、呆れるものを発見してしまった。俺の下半身、俺のブツに、コンドームが垂れ下がっている。白い体液を蓄えたままのコンドームが。

 

 と言うことは、そう言うことだ。俺の頭のなかにある確信を、現実として直視しなければならない。風呂場の扉を開け、ベッドの方を覗き込むと、やっぱり女が転がっている。ジュンコだ。素っ裸のジュンコが、俺の部屋のベッドの上で、寝転がっている。

 

 もう何が何だか分からない。トオルのつまらない話のあと、いったい何が起こったんだ。身体を拭いたタオルを腰に巻き、寝ているジュンコを起こさないようにと物音を立てず、抜き足、差し足と歩みを進め、静かにベッドに座ろうとした瞬間、プルプルプルプルッと電話の呼び出し音が鳴った。

 

 時計を見ると、ちょうど午後三時。ジュンコが電話の呼び出し音で起きていないか、目元と寝息を確認してから、受話器をとる。

 

「あ、もしもし、アキコです。」

 

 まだ、俺のブツには、コンドームが、ツイている。

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※この物語は、主人公の回想に基づき、だいたい8割くらい真実のフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません!とは言い切れません。

※夜の連続ブログ小説ということで、毎週月曜日から金曜日の夜8時(日本時間)に、最新話をアップいたします。毎晩読んでいただくのもよし、ある程度まとめて読んでいただくもよし、ご自由にお楽しみください。
 


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