この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第五話「マイ」

time 2015/10/23

第五話「マイ」
 服を脱ぎながら俺は「今、受験のために東京に来てて、ちょっと息抜きで遊びに来た。明日も早稲田の社会科学部の試験があるから。」と、聞かれてもないのに、自分が今置かれている状況を説明した。「しっかり疲れをとって、明日のテストも頑張ってね」と元気に言う彼女の方に目をやると、もう彼女は真っ裸だった。
「早稲田を受けるなんて、頭が良いのね。」
「ちゃうねん。早稲田しか知らんから、早稲田やねん。」
「頭が悪いひとは、早稲田を受けたいと思いませんよ。」
「ラグビーばっかりやってたから、勉強してへんねん。」
「へー、ラガーマンなんだ。すごい!」
「キャプテンやっててんで!」
「すごい!すごい!」

 こんな調子で何を言っても褒めてくれる彼女に、俺は夢中で話を続けた。父親がくれた小遣いでこの店に遊びに来たこととか、母親に顔が似ていると周りから言われることとか、小学校の時に生徒会長をしていたこととか、頭に浮かんだことを声に出した。彼女の股間を舐め回しながら。

「わたし、マイ子。よろしくね。」
「あ、俺、田附裕樹。」
「たづけひろきくん、真面目なのね。」
「なんで真面目?」
「だって、風俗に来て、フルネームを言う人なんていないよ。」
「あ、そうなんか。」
「うふふ。」
 
 他愛もない会話が楽しい。マイ子ちゃんは、決して美人ではないし、特別に可愛いという訳でもないけど、俺を安心させてくれる優しさがある。年は俺より6つ上の二十四歳。
「マイって呼んでも、ええかなぁ。」
「うん、マイって呼んで。」
 至福の時間は、あっという間に過ぎた。彼女は満面の笑みで「ほんと楽しかった。ありがとう。」と言った。彼女の笑顔からは、その言葉に嘘偽りがないように感じられ、彼女を満足させられたという自信が、俺の心を満たした。
「俺の方こそ、ほんまありがとう。マイ。」
「いえいえ、どういたしまして。ヒロくん。」
「俺、まだ1ヶ月おるから、まだ何回も来るからな。」
「はい、楽しみにしてるね。」
 マイは深々とお辞儀をしながら、俺を見送ってくれた。東京に来て本当に良かった、四月からは絶対に東京に住もうと決意を新たにした。つい1時間ほど前に歩いたばかりの歌舞伎町の街が、まったく違って見える。ティッシュ配りのお兄さんに「ありがとう」と大きな声でお礼を言って驚かれたけど、俺は今、最高にハッピーだ。少し動機が不純だけど、明日の受験に向けて、身の引き締まる思いだ。
 
 こうして、俺の東京のファッションヘルス初体験は、一生忘れられない思い出となった。

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※この物語は、主人公”田附裕樹”の回想に基づき、だいたい8割くらい真実のフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません!とは言い切れません。

※夜の連続ブログ小説ということで、毎週月曜日から金曜日の夜8時(日本時間)に、最新話をアップいたします。毎晩読んでいただくのもよし、ある程度まとめて読んでいただくもよし、ご自由にお楽しみください。
 

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