この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第三話「ワンダラー」

time 2015/10/21

第三話「ワンダラー」
 少し小走りで次の曲がり角まで向かい、左側の通りを覗き込んだ。思っていたよりも細い路地だけど、この通りで間違いなさそうだ。道幅2メートルくらいの薄暗い路地には海鮮料理屋が立ち並んでいて、エビや魚を焼いている煙がモクモクと充満しているその先に、オレンジ色の豆電球で囲まれた看板があり「ファッションヘルス ワンダラー」という文字が輝いている。

 日本最大の夜の歓楽街である新宿歌舞伎町、そのなかで”優良店”として週刊誌にも取り上げられている「ワンダラー」を前に、俺の興奮は最高潮に達していた。心臓の鼓動が激しくなるのを自覚できるほどに。でも、ひと呼吸して気持ちを落ち着かせる時間さえ、今の自分にとっては無駄なことのように思える。俺は、ワンダラーの店内へと飛び込んだ。

  黒い蝶ネクタイを付けたスーツ姿の中年の男性スタッフが、独特の抑揚をつけた口調で「いらっしゃいませ」と言いながら、俺を迎え入れてくれる。緊張を抑え込むのに精一杯で、うまく歩けない。明るい店内にはソファーが横一列に並んでいて、すでに男性客5人が座っている。ここが客の待合ルームだな。とにかく座りたくて、一番手前のソファーに腰を下ろした。

 
 「当店のシステムは、ご存知でしょうか。」と先ほどの“蝶ネクタイ”が聞くので、「いえ、初めてです」と答える。本当は、あの小さな囲み記事でシステムを把握しているので改めて聞く必要もないんだけど、「当店はファッションヘルスでして、四十分間で一万円になっております。目の前のショーケースで待機中の女の子からひとりを選んでいただいて・・・」という説明を聞きながら、心を落ち着ける。
 
 ソファーに座ると正面には、女性がズラリと並んでいて、男性客と相対する形になっている。ただし、客と女性たちの間はマジックミラーで仕切られていて、女性側からは男性客の顔や様子が見えない。だから、そこに並ぶ十人の女性たちは、男性客の視線を意識することもなく、思い思いの振る舞いをしている。
 
 大きな口を開けて談笑している左側の五人組は、この店のベテランだろうか。まるで友達の部屋に遊びに来たかのように寛いでいる。また、中央から右に少し肩身が狭そうに座っている4人組も、派手さではベテラングループに負けておらず、仲良さそうに目で合図を送り合ったりしながら楽しそうだ。時折、化粧ポーチを取り出しては、コンパクトを覗き込んで、口紅を塗りなおす女性もいた。
 
 とにかく若い。おそらく全ての女の子が二〇代のようだ。松山のピンサロのようなオバハンがいない。しかも、化粧や身のこなしが洗練されていて、松山のオバハンらとは雲泥の差だ。やっぱり日本の中心は東京なんだと、ファッションヘルスの待合室で実感させられた。
 
 ベテラングループの女性がひとり、男性スタッフに呼ばれて、マジックミラーの右側の方から出て行った。どうやら客から指名されたようだ。俺の隣の男性のところに蝶ネクタイが来て、「女の子の準備ができました」と伝える。
 
 俺も早く指名しないと人気の女性がいなくなってしまう。ベテラングループの綺麗なお姉さんに可愛がってもらうのも楽しそうだ。でも、あまりベテランだと馬鹿にされるかもしれないから、少しおとなしそうな四人組の方から選ぶ方がいいのかも、なかなか決心が出来ない。
 
 次は、4人組の方から、ひとりの女性に指名が入った。同じように女性がマジックミラーの向こう側の部屋から出て行き、こちら側のソファーに並んで座っている男性客に声が掛けられる。
 
 結局、俺より先に入っていた五人の男性客が全て個室へと移動していった。さらに、俺が入ってから十分後くらいに入ってきた男性客も、すぐにベテラングループの女性を指名して、個室へと消えていった。

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※この物語は、主人公の回想に基づき、だいたい8割くらい真実のフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません!とは言い切れません。

※夜の連続ブログ小説ということで、毎週月曜日から金曜日の夜8時(日本時間)に、最新話をアップいたします。毎晩読んでいただくのもよし、ある程度まとめて読んでいただくもよし、ご自由にお楽しみください。
 


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